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元社長、佐々木兼照さんが
語るかぼすブリ誕生秘話

臼杵の海

昭和55年に国と県、そして臼杵市と漁協が三つ子島近辺を漁場として開発し、養殖を始めました。
臼杵の海で育った養殖ブリは、低い水温の環境の中でじっくり育ち、肉質が良く、身が引締まっています。

目指すのは「氷見の寒ブリ」

ひと昔前の養殖ブリは脂が多く、口の中にしつこく残り、苦手にする人が多いのも確かでしたから、少しでもおいしいブリ養殖を目指しました。

ブリの養殖をするのであれば、天然ブリの王様といわれる富山県の「氷見の寒ブリ」を食べてみないと話にならないと思い、旬の時期に取り寄せたことがありました。
妻が立派な寒ブリをさばきながら「脂の乗りがすごい」と言っていたのを覚えています。
確かに、醤油につけると脂が浮くほどなのですが、食べてみるとサッパリしていて、とても驚きました。

試行錯誤の「かぼすブリ」

平成22年に、かぼすの果汁やパウダーをブリに与えるとよい影響があったという研究結果が大分県水産養殖協議会から発表され、「どなたかフィールド試験の取り組みをお願いできないか」と県内の養殖業者に打診があり、私は手を挙げることにしました。

かぼす入りの餌を、いつどの程度与えるかということは、海洋研究センターで実験した基本的なデータをもとに漁場で試行錯誤を繰り返しながら、研究者の方々と一緒に作り上げていきました。
かぼすの効果が最大限に現れる頃に出荷できるように、かぼす入りの餌を与えるタイミングを見極めることがポイントです。

かぼすブリは「カボスに含まれるポリフェノールやビタミンCなどの抗酸化作用によって血合が変色しづらい」と言われます。
もちろんそれも特長のひとつですが、私はそれ以上に脂がしつこくなく爽やかで、いくらでもおいしく食べられることに驚きました。
食べればすぐにかぼすブリか、そうでないかが分かるほどの効果が出たのは、長く養殖を続けてきた中でも初めてのことでした。

「かぼすブリ」を広めたい

かぼすブリを食べたときの驚きは、私に新しい力をくれました。大分県と一緒になって東京大阪、京都、名古屋など全国でPRを行いました。
「養殖のブリは苦手」というお客様を引き留めて試食をお願いしたこともありました。「おいしい。このブリは違う」と笑顔で褒めてくださったときは、本当にうれしかったものです。
知り合いの料亭に、かぼすブリのコース料理を考えてほしいとお願いもしました。

血合いの鮮やかな色を活かしたカルパッチョ、大分県の郷土料理「りゅうきゅう*」、「きらすまめし*」、定番のブリ大根、ネギを巻いてタレ焼きした難波焼き、アラレ揚げのあんかけにブリしゃぶ。
かぼすブリは皮が薄いこともあって、ブリしゃぶは旨みがぎゅっとつまった皮付きのままがおすすめです。

それから最後は雑炊です。ブリなどの青魚は生臭いので雑炊には向きませんが、かぼすブリは雑炊もおいしいのです。
私も自宅で食べるときにはブリしゃぶにして次の日に雑炊にするのが好きです。
地元の白だしでだし汁を作り、ポン酢で食べるかんたんレシピでも充分においしいですからぜひ試していただきたいですね。

  • *りゅうきゅう… 刺身をごまや薬味と一緒にタレに漬け込んだもの
  • *きらすまめし… 刺身をおからにまぶしたもの 地元の言葉で「きらす」はおから、「まめし」は「まぶす」こと

多くの方々に支えられ

これまでには赤潮によって大きな被害にあったこともありました。途方に暮れていたところに大勢の養殖仲間たちが方々から集まってくれて後始末を手伝ってくれたときにはうれしくて涙がでました。ずっと地元への出荷にこだわってきましたが、一番うれしいのは食べてくれた人の声が入ってくるところです。
「かぼすブリはおいしい」「ヒラマサは臼杵湾が一番」と良い評価をいただけることもあるし、質が良くなければ相応の反応があります。
その声を励みに、美味しい魚づくりに拘ってきました。

いのちをつなぐ

一生懸命に魚を養殖してきてあらためて思うのは、「いのち」です。命をいただき、命を育み、命を繋ぐ。
命の源である海からの贈り物をお客様にお届けしている。
そして魚を食べてくれる人があっての我々であるということ。
これから養殖に関わる方々には「ありがとういのちよ ありがとう海よ」という想いを大切に、かぼすブリをもっとおいしい魚に育て上げていただきたいですし、より多くの人たちに「おいしい」と食べてもらいたいと願っています。